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社会福祉法人青い鳥 第6回発達障害者支援フォーラム①「自分と社会の間(あいだ)をみつめ、つなげる」講演研修

発達障害のある方が地域で安心して健康に生活できるように活動をしている、社会福祉法人青い鳥が主催する第6回発達障害者支援フォーラムの講演を拝聴しました。


今回は3つのテーマで講演がありました。

本記事では講演1の熊谷晋一郎 氏(東京大学 先端科学技術研究センター 准教授)氏による、「自分と社会の間(あいだ)をみつめ、つなげる」のレポートを公開します。


研修受講:W.coキャンディ 加藤


脳性麻痺の障害を持ちながら小児科医としての経験後、東京大学にて教鞭をとる熊谷先生より、「自分と社会の間をみつめ、つなげる」と題してご講演をいただきました。


まず冒頭に、「障害」はどこにあるか?という考えについてご説明いただきました。

日本では、従来「障害は皮膚の内側にある」という考え方でした。障害は、障害を持つ人の体の中にあり、その本人が定型発達者に合わせた発達に近付くように医療的支援を受け、環境に適応していくべきだ、という考え方です。この考え方は、現在も障害について述べる時、まだ多くの人に根付いている感覚、考え方だと思います。

1980年代以降、エビデンスに基づいた医学が発達し、「障害は皮膚の外側にある」という考えられるようになりました。ここでいう障害は、そこにそびえたっている「階段しかない建物」が障害なのだ、という考え方です。つまり、大多数の人のことしか考えられずに造られた建物やサービス、社会そのものが、ある人にとって障害になるという考え方です。

このような考え方の変化を、医学モデルから社会モデルへの変化と言います。「医学で個人の障害を治療・軽減し、均質化した社会を目指す」という考え方から脱し、「個人の多様性を認め、すべての人が住みやすい社会を実現すべく、一人一人が主体的に考えて造りあげていく社会を目指す」ことへの変革が求められているといえます。


自閉症の診断基準の一部にもなっている「コミュニケーション障害」についても、発達障害を持つ方の身体的障害と捉えるのではなく、「個人と環境との間に生じているミスマッチ障害」であると捉えています。ある海外での論文では、自閉症の子どもの会話においてコミュニケーション障害が発生しにくい環境条件について社会モデル的に研究されており、「短い会話単位の連鎖で」「対面でない横並びで」「感情表現は控えめに」など、自閉症の人が会話に参加しやすいコミュニケーション空間には特徴があるということが示唆されています。

自閉症の方のコミュニケーション障害の手前には、「予想外のことにびっくりしやすい」「内臓の自律神経反応が敏感」「パーソナルスペースが狭く、より接近しないとコミュニケーションをとり始める距離だと感じない」「記憶をうまく頭の中で整理整頓できない」などのインペアメントがあるということも研究でわかってきたようです。上記のことを踏まえて、ASDの方が会話に参加しやすい環境について研究したり、逆に多数派(定型発達者)の行動の裏にどのような意味があるのかについての研究発表した書籍を発売したりなど、研究は多方の面から行われています。


私達保育者も、障害のことを考える際は定型発達に追いつかせる訓練をするという発想ではなく、それぞれの子がコミュニケーションが取りやすい環境に着目して記録・分析したり、自分達自身がどのような思考で行動しているかについても客観的に振り返る時間を持ち、まさに今回の講義の題目通り、「自分と社会の間にあるものを見つめ、つなげる」視点を持って日々を大切に過ごしていきたいと思います。


フォーラムの詳細はこちら

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