発達障害のある方が地域で安心して健康に生活できるように活動をしている、社会福祉法人青い鳥が主催する第6回発達障害者支援フォーラムの講演を拝聴しました。
今回は3つのテーマで講演がありました。
本記事では講演2の伊藤 達矢 氏(東京藝術大学 社会連携センター 特任教授)による、「アートと福祉の間(あいだ)をみつめ、つなげる」のレポートを公開します。
研修受講:W.coキャンディ 廣瀬
今回の研修で、冒頭に「健常者と困難を抱える人の間にどういう障害があるのかではなく、様々な状況にある方が、どうやって共生する環境を作っていくのか、そのためにはどういう取り組みが必要なのかを考える」というお話がありました。
つまり、第一回の講演と同じく、障害を社会モデル的に考え、障害のあるなしに関わらず、多くの人がつながっていける社会の在り方について考えるという共通した考え方があると思いました。
東京藝術大学では、芸術(アート)を通じて、いろいろな人が共生していける社会づくりを目指しているということです。
例えば、文化施設では芸術作品を鑑賞するためだけの場ではなく、その場でほかのだれかと語り合うことも含め、アートが社会的な役割を担っていると考えているようです。
芸術作品を見ることで、先人の作ったものに関心を寄せて「社会とつながり」、また、見た感想を同じ空間にいる誰かに話す(そのことについて言葉を発する)ことで隣にいる人とのコミュニケーションが生まれ、それこそが「社会との対話」となる。
それぞれの状況に合わせて、その人がそこにいることが肯定される環境を作ることがアートの役割なのです。
これからの日本社会における問題点としては超高齢化社会(国民の2/3が65歳以上になる)になっていくことに合わせ、コロナ渦で様々なコミュニティが分断されてしまったことが、望まない孤独や孤立に拍車をかけてしまっていることです。
そんな中、アートの持つ「関係ないものを結びつけたり、異なったものを混ぜ合わせたり、にじみ合わせたり、ときにひっくり返したりする」という特性を生かして、孤独孤立に陥りやすい人(高齢者、予備軍世代、その家族、介助者、障害を持つ人、子どもたち、多様な文化的背景を持つ方々など)が、様々な形で社会に参加していけるような回路を作っていくことが重要であると考えられています。
コミュニティというのは似たような環境や趣味などがある人たちのものであるという考え方が一般的でしたが、これらのお話を聞くと、アートコミュニティというのは異なる価値観や経験を持つ人たちを結びつける全く新しいコミュニティの概念だと思います。
私たちキャンディが行っている居場所づくり・まちづくり事業は、保育所が拠点となっていることから、子育て世代の方が多いコミュニティですが、働いている人や、街でのお散歩を見守ってくれる地域の方々は、子育てが終わっていたり、独身の方、外国にルーツがある方、障害がある方、本当に様々な方がいらっしゃいます。そんな環境も味方につけ、今後はさらに幅広いバックグラウンドを持った方々とも交流できるような、新しい居場所づくりの企画を考えていきたいと思いました。
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